【個別株投資】イントラスト(証券コード 7191)の成長を徹底分析!家賃保証の安定基盤と「医療・介護保証」が牽引する次のステージ
イントラストってどんな会社?「安心」を生み出すビジネスモデル
皆さん、こんにちは!今回は東証スタンダードに上場している株式会社イントラスト(証券コード 7191)について、深く掘り下げて企業分析を行っていきます。
イントラストのミッション:「信頼のまんなかに」
イントラストは、2006年に「連帯保証人代行システム」の構築を目指して誕生した総合保証サービス会社です。
彼らが提供する「保証サービス」の核心は、シンプルかつ強力です。
誰かと誰かの間での約束事が万一守られなかった場合、イントラストが代わりに約束を守ることで、双方に「安心」を提供する。
ここでいう約束事とは、主に金銭的な約束事です。
• 利用者の方のメリット:
◦ 支払いを確実に受けられる(債権者側)。
◦ 万一、支払いができない場合も、立替えてもらえる(債務者側、代位弁済)。
この「安心の方程式」を軸に、同社は保証事業と、そこで培ったノウハウを応用したソリューション事業を展開しています。
4つの主要な保証サービス
イントラストの事業は、単一の「総合保証サービス事業」として運営されていますが、その内訳は多岐にわたります。
1. 家賃債務保証: 賃貸物件を借りる際の連帯保証人を引き受け、管理会社様の家賃滞納リスクを保証。
2. 医療費用保証: 入院時の連帯保証人を引き受け、医療機関様の医療費滞納リスクを保証。
3. 介護費用保証: 介護施設利用時の連帯保証人を引き受け、施設様の利用料滞納リスクを保証。
4. 養育費保証: 養育費を支払う側の連帯保証人を引き受け、未払いが発生した際に受け取る方へ建て替えて支払う。
同社は、家賃保証で培ったノウハウを、社会が求める医療、介護、養育費といった幅広い分野に応用し、「社会の非対称性を解消し、あらゆる取引を活性化する」という役割を担っています。
【注目】なぜ今、イントラストの成長性に注目すべきなのか?
「保証会社」というと、一般的には家賃保証のイメージが強いかもしれません。
しかし、イントラストの真の魅力は、その安定した収益基盤と、社会の課題解決を成長に繋げるビジネスモデルにあります。
同社は、中期経営計画で明確な成長戦略を打ち出し、すでにその計画を上回るペースで業績を伸ばしています。
外部環境が追い風となる「保証市場」
保証市場は、外部環境からも強い追い風を受けています。
1. 民法改正(2020年4月施行)による機関保証への流れ:
◦ 連帯保証人が負う最大負担金額(極度額)の明示が義務化されたことで、連帯保証人の確保が難しくなり、機関保証(保証会社による保証)の需要が拡大しています。
2. 大手不動産管理会社への寡占化の進行:
◦ 不動産物件の管理が大手企業に集約される傾向にあり、大手企業との連携が強いイントラストのような企業の機関保証利用率がさらに高まっています。
3. 社会構造の変化による保証ニーズの拡大:
◦ 地縁・親族による相互扶助が希薄化し、連帯保証人を立てることが困難になる中、企業が個人の信用を保証する「社会システム」としての保証会社の役割が非常に重要になっています。
イントラストは、これらの社会的な変化と市場のトレンドを的確に捉え、家賃保証で培った高い専門性とデータに基づいた緻密なリスク評価能力を、成長分野(医療・介護)に横展開している点が、最大の強みであり、注目すべき理由です。
成長を支える柱:家賃債務保証の「安定と進化」
イントラストの成長の土台を支えているのは、やはり賃貸不動産分野の保証事業です。
これは、同社が「成長&収益の柱」として位置づけている事業であり、強固な収益を生み出しています。
右肩上がりの保有契約数と収益構造
家賃分野の保有契約件数は堅調に増加しており、2025年3月期には47万件を突破しています。保有件数の増加は、安定的な更新保証料収入に直結し、将来の収益を保証するストックビジネスの強みとなります。
また、賃貸不動産分野では、収益の土台となる家賃債務保証の安定性を高めるための取り組みが続けられています。
• 優良なクライアント企業との連携強化: ハウスメーカー系、全国規模ネット、地域ナンバーワンの管理会社など、優良なクライアントの成長をテコに事業を拡大しています。
• ソリューションからの保証へのシフト: 以前はソリューションサービス(SOL)として提供されていたものが、売上単価の高い保証商品への切り替えが進んでおり、これが売上を押し上げています。
• 地銀モデルの展開: 地方銀行へ保証システムやノウハウを提供し、地銀の保証事業の構築・運用を支援する「地銀モデル」を推進しています。現在、4行と提携中です。
利益を生み出す「3つの強み」
保証事業が高い利益率を維持できる背景には、同社独自の専門性があります。
| 強み | 内容 |
| 緻密なリスク評価 | 的確なリスク評価に基づき、優良な貸主/借り手を選択。無理な拡大をせず、経済性を向上させることで高利益率を実現。 |
| 効率的な回収体制 | 滞納発生率(約7.4%)に対して、滞納回収率98.1%という高い回収能力を持つ。専門スタッフとITインフラを活用し、コンプライアンスを重視した回収スキームを構築。 |
| クライアントの課題解決 | 審査や回収ノウハウ(専門性)をクライアントへ提供することで、クライアントの不慣れな業務を解放し、ソリューション提案を通じてニーズを解決する。 |
この盤石な体制があるからこそ、家賃保証事業は「成長と収益の柱」として、2027年3月期までに1.5倍の売上成長を目指す計画です。
次の成長エンジン:医療・介護分野の「ブルーオーシャン戦略」
イントラストが目指す次の成長ステージ「Change the Stage」 の鍵を握るのは、医療分野と介護分野への保証サービスの展開です。
これらの分野は、家賃保証で培ったノウハウを応用し、社会課題の解決とマーケットの育成を両立させる「新規マーケット育成」のフェーズにあります。
医療費用保証:未収金問題の「青い海」
医療機関にとって、患者の医療費未収金は深刻な経営課題です。病院の平均未収金は約430万円/年にも上るとされています。
• 市場の概況: 全国病院数は約8,000施設あり、イントラストはここに先行して参入しマーケットを創出しています。
• 導入実績: 2025年9月末時点で、239の医療機関(病床数55,858床)に導入実績があります。国立医科大学への導入実績もあり、その信頼性の高さを物語っています。
• 主要商品「スマホス」:連帯保証人代行制度である「スマホス」の導入が伸長しており、保険会社との協業も進み、導入数が加速しています。
• 成長戦略: 医療費用保証は、「保証未開拓のブルーオーシャン市場」と捉えられており、2027年3月期までに2.9倍の売上成長を目指しています。
病院経営の悪化や外部監査の義務化、訪日外国人の増加など、外部要因によって保証需要はますます高まる見込みです。
介護費用保証:超高齢社会の安心を支える
少子高齢化が進む日本では、介護施設における保証の需要も高まっています。
• 市場の概況: 全国で対象となる施設数は非常に多く、潜在市場は広大です。
• 導入実績: 2025年9月末時点で、介護費用保証を提供する介護事業者数は308事業者に達しています。
• 商品力強化: 特に傷害保険付き介護費用保証が好調で、保証付保率の向上に寄与し、売上・契約件数を着実に伸ばしています。
• 成長戦略: 介護費用保証は、2027年3月期までに4.5倍の売上成長という、最も高い成長目標が設定されています。大手事業者へのオーダーメイド型保証の提供や、既存取引先への販促強化を通じて、施設内での保証付保率の向上を加速させる計画です。
新規事業創造:養育費保証への挑戦
また、同社は社会情勢の変化を捉えた新規事業への挑戦も続けています。
2018年には日本で初めて養育費保証を開始し、子どもの貧困問題(養育費の未払い)という社会的課題の解決に貢献しています。
今後は、養育費保証のバージョンアップに加え、在留外国人向け借主代行サービス『美風居』のスタートなど、新しい事業創造にチャレンジしていきます。
養育費保証は、地方自治体における政策推進の兆しもあり、2027年3月期までに45.8倍の成長を目指す計画です(ただし、新規事業のため実績値はまだ小さい)。
最新決算ハイライト(2026年3月期第2四半期)と中期経営計画の展望
イントラストは、安定した保証ビジネスを背景に、極めて好調な業績を継続しています。
2026年3月期 第2四半期(中間期)連結業績の概要
(2025年4月1日~2025年9月30日)
| 項目 | 当中間期実績(百万円) | 前年中間期増減率 | 主な要因 |
| 売上高 | 5,860 | +15.8% | 家賃保証の更新保証料伸長、新規契約数増加。 |
| 営業利益 | 1,388 | +22.4% | 保証事業の増収と貸倒コストの安定化。 |
| 経常利益 | 1,400 | +22.8% | 。 |
| 親会社株主に帰属する中間純利益 | 879 | +33.6% | 。 |
| 1株当たり中間純利益 | 39.33円 | (前年同期 29.43円) | 大幅に増加。 |
好調な業績を牽引している要因
• 保証事業の増収:保証事業の売上高は5,374百万円で、前年同期比19.2%増と大きく成長しました。家賃債務保証において、ソリューションサービスからの切替や新規契約数の増加により、初回保証料および更新保証料が伸長したことが寄与しています。
• 利益率の改善:保証事業の増収に伴う業務委託手数料や決済手数料の増加はありましたが、その他の費用を抑制できたこと、また子会社(プレミアライフ社)の債権回収体制改善により貸倒費用が縮小したことで、大幅な増益を達成しました。
• 新分野の躍進:医療費用保証は前年同期比141.6%増、介護費用保証は155.4%増と、次の成長エンジンが着実に育っています。
通期業績予想と進捗状況
2026年3月期の通期連結業績予想は、2025年5月9日発表の計画から修正はありません。
| 項目 | 通期予想(百万円) | 上期実績(百万円) | 通期計画に対する進捗率 |
| 売上高 | 12,000 | 5,860 | 48.8% |
| 営業利益 | 2,600 | 1,388 | 53.4% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1,550 | 879 | 56.8% |
売上高は計画通りの進捗ですが、利益面ではすでに50%を超える高い進捗率となっており、通期目標達成に向けて順調に進捗しています。
同社は、増収増益の連続記録更新を目指し、プライム市場への再上場も視野に入れています。
第3次中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)の目標
同社は「Change the Stage」をスローガンに、さらなる成長ステージへの躍進を目指しています。
| 項目 | 2024年3月期(実績) | 2027年3月期(目標) | 期間成長率 |
| 売上高 | 8,971百万円 | 15,000百万円 | 1.7倍 |
| 営業利益 | 2,073百万円 | 3,000百万円 | 1.4倍 |
| 営業利益率 | 23.1% | 20.0% | 成長への投資を優先 |
| 配当性向(配当金) | 32.8%(18円) | 40~60%(47円) | 最終年度60%目標 |
| ROE | 20.16% | 20%以上 |
この中期経営計画では、売上成長を最優先し、営業利益率は一時的に20%に抑え、その原資を医療・介護分野の先行投資やDX投資、M&Aなどに充てる方針が明確に示されています。
揺るぎない財務基盤とステージアップする株主還元策
安定的な保証事業を基盤とするイントラストは、極めて強固な財務体質を持っています。
これは、投資家にとって大きな安心材料となります。
圧倒的な財務健全性
2026年3月期中間期末時点の連結財政状態は以下の通りです。
• 総資産: 12,108百万円。
• 純資産: 7,599百万円。
• 自己資本比率: 62.6%。
自己資本比率は高く、極めて健全な財務状態を維持しています。
キャッシュ・フローの状況も良好です。
• 営業活動によるキャッシュ・フロー: 949百万円の増加(前年中間期は561百万円の増加)。税金等調整前中間純利益1,400百万円や、貸倒引当金の増加額254百万円、前受収益の増加額157百万円などが主な増加要因です。
• 現金及び現金同等物の中間期末残高: 7,388百万円に増加しています。
この強固な財務基盤は、今後の成長を加速させるための「成長投資」(挑戦投資、先行投資、実現投資)を積極的に行うための重要な支えとなります。
投資額目安は、中期経営計画の3年間で1400~2300百万円と設定されています。
株主還元:10期連続増配への期待と配当性向の引き上げ
イントラストは、将来の事業拡大と企業体質強化のための内部留保を確保しつつ、業績と連動した安定的な配当を継続することを基本方針としています。
同社は、2026年3月期において10期連続増配を計画しており、株主還元をさらに推進しています。
• 2026年3月期(予想): 年間配当金は35.0円(中間17.50円、期末17.50円)を計画しており、これは前期から10円の増配です。配当性向は50.5%となる見込みです。
• 中期経営計画の目標: 配当性向は段階的に引き上げられ、最終年度(2027年3月期)には60%の実現を目指します。
これは、単に業績が好調だから増配するだけでなく、株主還元へのコミットメントをステージアップさせるという経営の強い意思の表れです。
まとめ:イントラスト投資の魅力と留意点
株式会社イントラストの企業分析を通して、同社が「安定成長」と「新規市場開拓」の二軸で、確かな成長戦略を実行していることが分かりました。
イントラスト投資の魅力
• 盤石なストック収益源:家賃債務保証事業は、市場環境(民法改正、寡占化)が追い風となり、保有契約数の増加と高い回収率に裏打ちされた安定的な収益を生み出しています。
• 成長ポテンシャルが高い新分野:医療、介護といった社会課題解決型の市場は、未開拓な「ブルーオーシャン」であり、高い成長目標(医療2.9倍、介護4.5倍)を掲げ、先行投資を進めています。
• 好調な業績と高い進捗率:最新の2026年3月期第2四半期決算は、利益面で通期計画に対し50%を超える高い進捗率を示しており、計画の確実性が高いと評価できます。
• 積極的な株主還元:配当性向を段階的に引き上げ、中期計画最終年度には60%を目指すなど、投資家へのリターンにも積極的です。
投資における留意点
成長投資を行う企業であるからこそ、いくつかの点に留意が必要です。
• 成長投資に伴う利益率の変動:中期経営計画では、医療・介護分野への先行投資やM&A(PMI)に伴い、営業利益率を意図的に20%に抑える方針です。これは成長のための必要な投資ですが、短期的には利益率が変動する可能性があることは理解しておく必要があります。
• 事業環境のリスク:日本経済全体として、米国の通商政策などの影響による景気下押しリスクや、金融資本市場の変動には注意が必要です。
• 家賃保証市場の動向:主要事業である家賃保証事業において、賃貸住宅の新設着工戸数が調整局面にあるなど、関連業界の動向は注視が必要です。
イントラストは、既存の強みを活かしつつ、社会の「安心」に対するニーズが拡大する分野に果敢に挑戦し、次の成長ステージへとシフトしようとしています。
これは、単なる「保証会社」ではなく、社会インフラを支える「総合保証サービス会社」のリーディングカンパニーとしての躍進を目指す姿だと言えるでしょう。
皆さんが投資を検討する際は、この安定基盤と挑戦的な成長戦略のバランスを評価し、ご自身の投資判断にお役立てください。
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【補足情報】 株式会社イントラストは、東証スタンダード市場(証券コード 7191)に上場しており、2025年10月29日に2026年3月期第2四半期(中間期)決算短信を発表しています。
(本記事は、提供された決算資料、中期経営計画、IR情報などの公開情報に基づいて作成されており、投資勧誘を目的とするものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。)
